CSM版発売決定記念『徹底検証ファイズギア』【前編】〜玩具版ファイズギアの歴史を振り返る
▼はじめに
バンダイから、仮面ライダーの"大人用"変身ベルト玩具『COMPLETE SELECTION MODIFICATION(コンプリートセレクション・モディフィケーション)』というシリーズ(以下、CSM)が展開されている。
(公式サイト: http://www.b-boys.jp/csm/ )
これは、平成仮面ライダー作品の放送時に発売されていた従来のDX変身ベルト玩具に重塗装や音声の追加、さらにアジャスターを用いたベルト部の延長や使用素材の変更などを施した、まさにキャッチコピー通りの「大人の為の変身ベルト」玩具である。
当記事を読んでいる方々は恐らく平成仮面ライダーファンが多数を占めると思われるのでもはや説明不要な気もするのだが、それはそれで不親切な気もするので一応、ここに記しておく事とする。
当時としては斬新な電化製品モチーフの変身アイテムであり、変身に使うアイテムも折り畳み式携帯電話(!)、所謂「ガラケー」モチーフである。そのシークエンスも、特定のコードを携帯電話に入力して変身ベルトに差し込むと変身が完了する……というかなりぶっ飛んだものであった。
特に主力玩具である『変身ベルト DXファイズドライバー』は高水準の売り上げを記録しており、それは6年後に放送された「仮面ライダーW」の変身ベルト玩具 「DXダブルドライバー」に塗り替えられるまで歴代最高の売り上げ記録を保ち続けていた。
その「ファイズギア」が、作品の本放送から約12年経過した今年度、満を持してのリメイクとなる。
▼CSMファイズギアに集まる期待
ファンには周知の事実かもしれないが、『ファイズギア』の大人向けリメイク版の発売はは今回が初ではない。
そもそも、CSMシリーズ自体が大人向け変身ベルト玩具の祖ではない。この企画の前身として展開されていた『COMPLETE SELECTION(コンプリートセレクション』(以下、CS)が大人向け変身ベルト玩具として先陣を切ったのが始まりである。
このCSシリーズは『番組放送当時に発売されたDX玩具版を元に一部仕様の変更や塗装の強化をしローコスト化を図る』CSMシリーズとはコンセプトが異なり、大人の身体に装着しても見劣りせぬよう金型を一から作り直し、サイズの大幅アップは勿論のこと、牛革やダイキャストをふんだんに使用していたりと、コストも基本的にはCSMの数倍掛かっている。"定価1万弱"となるべくロープライスを目標としているCSMと比べて、CSは定価3万円台がデフォルトとなっていた。
この『CS版ファイズギア』は"定価約3万円"と、大人向けの枠を鑑みてもかなり高めの値段設定であった(後々それがデフォルトの値段設定になるのだが)が、商品仕様として全体的なサイズアップに加え、バックル部分には1kg強のダイキャストを使用し、随所に汚し塗装が施され、さらには細部のディティールアップにも力が入れられており、当時のアダルト層の「ファイズ」ファンからは相当な期待が集まっていたらしい。
………のだが、いざ蓋を開けてみるとその評価はお世辞にも高いとは言い難いものであった。いかんせんシリーズ第一弾という事もあり、製作側の試行錯誤が伺える面も勿論あるのだが、結果的にCS版ファイズギアは「賛否両論」の評価を生む事になってしまったのだ。
参考までに、賛否両論の「否」の部分についていくつか触れてみよう。
ます、バックル部に高級感のあるダイキャストを使用するまでは良いのだが、既にこの部分だけで製作コストが大幅に上がっていたようである。その皺寄せと言うべきか、遊んでいる途中にその重みでバックル部分が腰からずり下がってしまう……という事案もあったようだ。
また、ある意味ファイズギアの顔とも言うべき「ミッションメモリー」もハッキリ言ってあまりよろしいものではなかった。
中心部分のモールドの塗装が省かれていたり、造形も劇中と比べるとイマイチ似ているのか似ていないのか微妙なラインなのだ。
ミッションメモリーについては変身前と変身後で異なる形の劇中プロップ(変身前がDX玩具版のリペイント、変身後は撮影用の立体造形がなされたもの)が使用されており、このCS版は恐らく後者の方を元にしたものと思われるが、それでも劇中のものと似ているかと言われると……微妙なところだ。
おまけに、メモリー部にも金属を使用したせいで重厚感こそ有るものの、それを差し込むファイズフォンが明るいシルバーで塗装されているため、明らかに金属部が色味的に浮いてしまっている。
また、リアル感を出す為に追加要素として施された『汚し塗装』もこれまた賛否が分かれている。ネット上では「雰囲気が出ていて格好良い」と云う意見もあれば「余計な事をしなくていいから綺麗な状態の塗装で販売してほしかった」と云う不満意見も見掛けた。これについては各々の好みの問題だろうか。
そして、どう頑張っても擁護できないのは付属の周辺武器だ。ファイズギアは、左右のサイドバックルに周辺武器=懐中電灯型のキック用ユニット「ファイズポインター」とデジカメ型パンチ用ユニット「ファイズショット」が装着されており、CS版でもこれを収録したのだが、驚く事にサウンドギミックもライトギミックも省略されてしまった。
放送当時のDX玩具版は劇中通りに鳴って光るギミックが搭載されていたので、当然CS版を購入したファンは箱を開けるまで、この機能は当たり前のごとく実装されているものと考えていた方が大勢だと思うのだが、値段設定に見合わない思わぬギミックの省略に憤慨したファンも多いと聞く。
唯一サウンド&ライトギミックが搭載されているファイズフォンも、DX版玩具の基板を丸々流用しているようで追加音声などは一切無く、音質の改善もされていない。
と、ここまで不満点をいくつか挙げてきたのだが、CS版ファイズギアは決して悪い点ばかりではない。子供用玩具とは明らかに差別化された大きなサイズや手にした者にしか分からない重厚感、そしてなによりも「大人向けの変身ベルト」のシリーズの礎を築いてくれた偉大なる功績がある。このCS版ファイズギアが無ければ以後のシリーズ、ひいてはCSMシリーズの企画も存在し得なかったと言っても過言ではないはずだ。
そして、十数年の時を経てCSMシリーズへのラインナップが決定した今作。大人向けの変身ベルト玩具が再リメイクされるのは極めて異例であり、ファイズギアへの幅広い層からの根強い人気が伺えるというものだ。満を持しての再リメイクだけに、旧大人向け版では出来なかったギミックの追加や仕様変更にファンからの期待が集まっている。
また、番外的な立ち位置の玩具として後年発売された『レジェンドライダー変身ベルトシリーズ 仮面ライダーファイズ』がある。これについては後の記事で触れるが、この商品は所謂「廉価版」であり、塗装や造形、サウンドギミックがある程度簡略化されている商品仕様のため、同列に語るのはあまり適切ではないだろう。
▼記事の締め方が少々粗雑であるが、ここまでは前置きに過ぎない。
次回の記事【中編】では、いよいよ本題に入る。題名通り、「555」本編で使用された『ファイズギア』の劇中プロップとその種類、及び玩具版との『徹底比較検証』を行う。
肝心のCSM版ファイズギアの情報解禁が2016年4月22日とすぐそこまで迫っているため、早めに記事を書き上げたい……ところ。